グリスは、機械部品の潤滑や放熱を目的として広く使用される半固体の潤滑材です。
これらの特性から、電子機器、自動車、産業機械など様々な分野で使用されています。
しかし、熱伝導性については銅や他の物質とどのような違いがあるのでしょうか。
このような背景もあり、この記事では、グリスの熱伝導率とその単位、温度依存性、銅や他の材料との比較について詳しく解説します。
グリスの熱伝導特性を理解し、適材適所で活用していきましょう!
グリスの熱伝導率と単位【W/(m·K)やkcal/(m·h·℃)など】
まずは、グリスの熱伝導率の値と一般的な単位を確認しましょう。
熱伝導率とは、物質の熱伝導性能を表す物性値で、単位面積あたり、単位時間あたり、温度勾配1 K/mで伝わる熱量を表します。
熱伝導率が高いほど、熱を速く伝えることができます(^^)/
一般的なグリスの熱伝導率(常温常圧付近)は以下の通りです。
グリスの種類 | 熱伝導率 (W/(m·K)) | 熱伝導率 (kcal/(m·h·℃)) |
---|---|---|
一般的なグリス | 0.2〜0.3 | 0.17〜0.26 |
熱伝導グリス(シリコンベース) | 0.7〜3.0 | 0.60〜2.58 |
金属粒子含有グリス | 3.0〜8.0 | 2.58〜6.88 |
セラミック粒子含有グリス | 4.0〜10.0 | 3.44〜8.60 |
カーボンナノチューブ含有グリス | 5.0〜20.0 | 4.30〜17.20 |
ここで、1 W = 0.86 kcal/hであることを利用して、各単位の値を相互に変換できます。
グリスの熱伝導率は、その配合や含有物によって大きく異なり、一般的な潤滑用グリスから高性能な熱伝導グリスまで幅広い値を示します。
グリスの熱伝導率の温度依存性
グリスの熱伝導率は温度によって変化します。
以下は、様々な温度でのグリスの熱伝導率を示した表です:
グリスの種類 | 温度 (K) | 温度 (℃) | 熱伝導率 (W/(m·K)) |
---|---|---|---|
シリコンベース熱伝導グリス | 253 | -20 | 0.9 |
298 | 25 | 1.5 | |
343 | 70 | 1.3 | |
373 | 100 | 1.0 | |
金属粒子含有グリス | 253 | -20 | 5.0 |
298 | 25 | 6.5 | |
343 | 70 | 5.8 | |
373 | 100 | 4.5 |
簡単に整理しますと、
1. 多くのグリスは、常温付近(25℃前後)で最も高い熱伝導率を示します。
2. 温度が上昇するにつれて、ベースオイルの粘度低下などにより熱伝導率は徐々に低下する傾向があります。
3. 極低温では、グリスの硬化により熱伝導率が低下することがあります。
グリスの熱伝導特性は、温度によって変化するため、使用環境に応じた適切なグリスの選択が重要であることがわかります(^^)/
銅や他の熱伝導材料との比較
グリスの熱伝導率を銅や他の代表的な熱伝導材料と比較してみましょう:
材料 | 熱伝導率 (W/(m·K)) |
---|---|
銅 | 398 |
アルミニウム | 237 |
ステンレス鋼 | 14〜16 |
カーボンナノチューブ含有グリス | 5.0〜20.0 |
セラミック粒子含有グリス | 4.0〜10.0 |
金属粒子含有グリス | 3.0〜8.0 |
熱伝導シリコーングリス | 0.7〜3.0 |
一般的なグリス | 0.2〜0.3 |
空気 | 0.026 |
整理しますと以下の通りです!
1. 最も高性能な熱伝導グリスでも、銅やアルミニウムなどの金属の熱伝導率には遠く及びません。
2. グリスの種類により、熱伝導率は大きく異なります:
– カーボンナノチューブや金属粒子を含有した高性能グリスは、一般的なグリスの約10〜100倍の熱伝導率を示します。
– しかし、それでも銅の熱伝導率の約1/20〜1/80程度にとどまります。
3. グリスの主な役割は、接触面の微小な隙間を埋めて熱伝導を促進することです:
– 金属同士の接触面には微小な凹凸があり、実際の接触面積は見かけ上の面積の数%程度しかありません。
– その隙間は空気(熱伝導率0.026 W/(m·K))で満たされるため、熱伝導の大きな障壁となります。
– グリスはこの空気を置き換えることで、熱伝導経路を確保します。
4. グリスは金属よりも熱伝導率が低いものの、接触熱抵抗を大幅に減少させるため、システム全体の熱伝導性能を向上させます。
5. 用途に応じて、熱伝導性、電気絶縁性、耐熱性、長期安定性などのバランスを考慮して、適切なグリスを選択する必要があります。
まとめ グリスの熱伝導率の温度依存性は?銅や他の熱伝導材料との比較も!
本記事では、グリスの熱伝導率とその単位、温度依存性、そして銅や他の熱伝導材料との比較について詳しく解説しました。
グリスは金属などの固体材料と比較すると熱伝導率が低いものの、接触面の空気層を置き換えることで熱伝達を大幅に改善する重要な役割を果たしています。
特に電子機器の冷却や熱管理が重要な場面では、適切なグリスの選択と正しい塗布方法が機器の性能と寿命に大きな影響を与えることがわかりました!