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射出成形のヒケ対策とは?原因と対処方法を解説!(成形不良・金型設計・成形条件・品質改善)

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射出成形で最も頻繁に発生する成形不良のひとつが「ヒケ(sink mark)」です。

ヒケとは製品表面が局部的にくぼんでしまう現象であり、外観品質の問題だけでなく寸法精度の低下・強度不足にもつながります。

スマートフォンケース・自動車内装部品・家電外装など、高い外観品質が求められる製品では、ヒケの発生は重大な品質問題となります。

本記事では、ヒケの発生原因・発生しやすい部位・金型設計による対策・成形条件による対策まで、実務で役立つ形で詳しく解説していきます。

ヒケとは?発生原因と発生しやすい部位

それではまず、ヒケの定義と発生原因について解説していきます。

ヒケ(sink mark)とは、射出成形品の表面が局部的にくぼんでしまう現象であり、主に肉厚が厚い部分や肉厚変化が大きい部分で発生します。

ヒケの根本的な原因は、溶融樹脂が冷却・固化する際の「体積収縮」です。

ヒケの発生メカニズム

① 射出後、金型内の樹脂が冷却・固化を開始する

② 表面(金型壁面に接する部分)から先に固化し、固化層が形成される

③ 内部はまだ溶融状態で冷却収縮が続く

④ 内部の収縮に伴い、固化した表面層が引っ張られてくぼみ(ヒケ)が発生する

⑤ 特に肉厚が厚い部分では内部の溶融量が多く、収縮量も大きいためヒケが目立つ

ヒケが特に発生しやすいのは、リブ・ボス・肉厚変化部・ゲート対面(流れの末端)などの部位です。

リブやボスの根元付近では局所的に肉厚が大きくなるため、内部収縮によって外表面にヒケが現れやすいという特徴があります。

ヒケの程度を左右する要因

ヒケの大きさ・深さは複数の要因によって決まります。

樹脂の成形収縮率が大きいほどヒケが発生しやすく、PP・PE・POMなどの結晶性樹脂は非晶性樹脂(ABS・PSなど)に比べて収縮率が大きいためヒケが出やすい傾向があります。

製品の肉厚が厚いほどヒケが深くなり、肉厚の差が大きいほどヒケが目立ちます。

成形条件(保圧・冷却時間・型温度)が不適切だとヒケが大きくなるため、条件の最適化が重要です。

ヒケとボイドの違い

ヒケと混同されやすい成形不良として「ボイド(void)」があります。

ヒケは表面がくぼむ現象ですが、ボイドは製品内部に気泡(空洞)が生じる現象です。

製品表面が硬い(剛性が高い)材料や肉厚が非常に厚い場合は、表面が変形せず内部に気泡(ボイド)として収縮が現れます。

ヒケとボイドはどちらも冷却収縮が原因ですが、現れ方と対策がやや異なるため、発生形態を正確に把握することが改善の第一歩です。

ヒケ対策①:金型設計による対策

続いては、金型設計の段階でヒケを防ぐための対策を確認していきます。

金型設計時の対策は製品設計変更なしに実施できるため、最も根本的なアプローチのひとつです。

リブ・ボスの設計最適化

ヒケの最大の発生原因である「局所的な肉厚増加」を防ぐために、リブとボスの設計を最適化することが最も効果的な対策です。

リブの肉厚は基本肉厚の50〜70%以下に抑えることが一般的なガイドラインとされており、これを守ることでリブ根元のヒケを大幅に低減できます。

ボスの外壁厚さも基本肉厚の60〜70%以下に設計し、ボスの内径を大きく(薄肉化)することがヒケ防止に有効です。

ゲート位置と肉厚設計の最適化

ゲートを肉厚の最も厚い部分(最もヒケが発生しやすい部分)の近くに配置することで、保圧が有効に作用してヒケを抑制できます。

ゲートから遠い部位は保圧が届きにくく収縮補正が不十分になりやすいため、製品設計の初期段階からゲート位置を考慮した肉厚設計を行うことが重要です。

均一肉厚設計(肉厚変化を最小限にする)もヒケ防止の基本原則であり、急激な肉厚変化を避けることがポイントです。

冷却回路の最適化

金型の冷却回路をヒケが発生しやすい部位(リブ根元・ボス周辺)に近づけることで、局所的な冷却を強化しヒケを抑制できます。

コンフォーマル冷却(製品形状に沿った3次元冷却回路)は金属積層造形(AM)技術によって実現でき、均一冷却によるヒケ低減に高い効果を発揮するでしょう。

ヒケ対策②:成形条件による対策

続いては、成形条件の調整によるヒケ対策を確認していきます。

保圧の最適化

保圧(holding pressure)は射出充填後に圧力をかけ続けることで、冷却収縮による体積減少を補う樹脂を追加供給する工程です。

保圧圧力を高くするか保圧時間を長くすることで、収縮補正が向上してヒケを低減できます。

ただし保圧が過剰だとバリ・残留応力・過充填の原因になるため、適切な保圧条件の最適化が必要です。

保圧切り替えタイミング(V/P切り替えポイント)もヒケに影響し、ゲートが固化するまで保圧をかけ続けることが収縮補正の基本です。

冷却時間と型温度の最適化

冷却時間を長くすることで金型内での樹脂の固化が進み、型開き・取り出し時の変形・ヒケを低減できます。

型温度を低くすることで表面の固化が早まりヒケが改善する場合がありますが、型温が低すぎるとウェルドラインや転写不良の原因になることもあります。

最適な型温度は樹脂の種類と製品要求品質によって異なるため、材料メーカーの推奨条件を参考にした上で調整することが重要です。

まとめ

本記事では、射出成形のヒケについて発生メカニズム・発生しやすい部位・金型設計による対策・成形条件による対策まで詳しく解説してきました。

ヒケは冷却収縮による体積減少が原因で発生し、リブ・ボス・肉厚変化部に特に発生しやすい成形不良です。

金型設計による対策としてはリブ・ボスの肉厚最適化・ゲート位置の最適化・冷却回路の強化が有効です。

成形条件による対策としては保圧の適切な設定・冷却時間の延長・型温度の最適化が基本的なアプローチです。

ヒケの原因と対策を正確に理解し、製品設計・金型設計・成形条件の最適化による品質改善に積極的に役立ててみてください。