過電流継電器の記号と結線図は?図面表記方法も(電気図面:回路図記号:配線図:保護回路表記など)
電気設備の設計や保守において、図面を正確に読み書きする能力は電気技術者にとって基本中の基本です。
過電流継電器(OCR:Over Current Relay)は、電力系統保護の要として広く使用される装置ですが、電気図面での正確な表記方法を理解していなければ、設計ミスや工事上のトラブルにつながります。
本記事では、過電流継電器の電気図面における記号の表記方法から、結線図の読み方・描き方、JIS規格に基づく表記の基準、さらにはCAD図面での実践的な描き方まで詳しく解説します。
電気主任技術者・電気工事士・設備設計者の方々に役立つ実践的な内容を網羅しています。
過電流継電器の図面記号と基本表記ルール
それではまず、過電流継電器を電気図面で表現する際の記号と基本的な表記ルールについて解説していきます。
JIS規格による過電流継電器の記号
日本の電気図面では、JIS C 0617(電気用図記号)およびJIS C 0617-7(電気用図記号-第7部:開閉器・制御器及び保護装置)に基づいて記号が定められています。
過電流継電器の一般的な記号表記では、正方形または長方形の中に「OCR」「OC」または国際規格に準じた「51」という数字が記入されます。
数字「51」はANSI/IEEE規格(ANSI C37.2)における過電流継電器のデバイスナンバーです。
日本の電気設備では、JIS記号とANSIデバイスナンバーが併用される場面も多く、どちらの表記が使われているかを図面の凡例で確認することが重要です。
| 継電器の種類 | ANSIデバイスナンバー | 一般略称 | 機能概要 |
|---|---|---|---|
| 過電流継電器 | 51 | OCR | 一定電流以上で時限動作 |
| 瞬時過電流継電器 | 50 | OCRI(瞬時要素) | 大電流(短絡)で瞬時動作 |
| 地絡過電流継電器 | 51G・51N | OCGR | 地絡電流を検出して動作 |
| 電圧抑制付き過電流継電器 | 51V | 51V | 電圧低下時に感度上昇 |
| 方向性過電流継電器 | 67 | DOCR | 電流の方向も判別して動作 |
図面上での継電器記号には、接点記号を組み合わせて回路動作を表現します。
継電器の動作による接点には、常開接点(NO:Normally Open)と常閉接点(NC:Normally Closed)があります。
変流器(CT)と過電流継電器の図面表記の関係
過電流継電器は単体では動作せず、必ず変流器(CT:Current Transformer)と組み合わせて使用されます。
図面では、CTの二次側電流を過電流継電器に入力する回路を正確に表現する必要があります。
CTの図面記号は、コアを表す円形と一次側・二次側の巻線を表す線で構成されます。
CT比(変流比)は「300/5A」のように図面に記入され、一次側電流を何分の一に変換して継電器に入力するかを示します。
複数相の過電流を検出する場合は、各相にCTを設置して各相の二次電流を継電器に入力する結線図を描きます。
三相回路では、2CT方式(R相とT相の2個)または3CT方式(R・S・T各相)が用途に応じて選択されます。
保護リレー回路における接点の表記方法
過電流継電器の動作出力(接点)は、遮断器(CB:Circuit Breaker)のトリップコイルに接続され、遮断動作を行います。
この保護トリップ回路の図面表記において、「52TC」(遮断器トリップコイル)や「52T」という表記が使われます。
保護回路の結線図では、直流制御電源(110V DC・48V DCなど)を電源とする回路に、継電器接点・補助リレー接点・遮断器トリップコイルが直列に接続された形で表現されます。
ラダー図(シーケンス図)形式で表現されることが多く、縦の線が電源ラインを、横の線が各機器を含む制御回路を表します。
過電流継電器の標準的な結線図パターン
続いては、現場でよく使われる過電流継電器の代表的な結線図パターンについて確認していきます。
高圧受電設備における基本結線図
高圧受電設備(6.6kVクラス)では、過電流継電器は以下のような構成で設置されます。
高圧受電設備 過電流保護の基本構成
一次側:電力会社の配電線(6.6kV)
↓
DS(断路器)→ VCB(真空遮断器)
↓
CT(変流器)× 2相または3相
↓
過電流継電器(OCR)× 相数分
↓ 接点出力
VCBトリップコイル → VCB遮断動作
※地絡保護は別途OCGR(地絡過電流継電器)またはZCT+DGRで構成
この基本構成において、CT二次配線のポラリティ(極性)は非常に重要です。
CTの極性を誤って接続すると、継電器の電流方向が逆になり、保護動作に支障をきたします。
図面上でのCT極性表記には「●」マークや「P1/P2」「S1/S2」などの端子記号が使われます。
三相回路の2CT結線と3CT結線の比較
三相回路の過電流保護における変流器の結線方式には、主に2CT結線と3CT結線があります。
2CT結線は、R相とT相(またはA相とC相)にCTを設置し、S相の電流をキルヒホッフの電流則で代用する方式です。
CT2個で三相の過電流保護が可能であり、コスト面で有利ですが、S相単独での地絡・不平衡検出には不向きです。
3CT結線は、三相すべてにCTを設置する方式で、各相の電流を個別に監視できます。
不平衡電流の検出や地絡保護の精度が高く、重要度の高い設備や発電機保護には3CT結線が用いられます。
図面上では、2CT結線は三相母線から2本のCT二次配線が継電器に接続される形で、3CT結線は3本の配線が各相の継電器に接続される形で表現されます。
トリップ回路の結線図と自己保持回路の表記
過電流継電器がトリップ動作すると、遮断器がオープンになりますが、継電器接点が一瞬しか閉じない場合、確実な遮断動作が保証されません。
そのため、補助リレーを使った自己保持回路(ラッチング回路)が組み込まれることがあります。
自己保持回路では、過電流継電器接点が動作すると補助リレーが励磁され、補助リレー自身の自己保持接点でラッチします。
遮断器が遮断した後も補助リレーが保持され、確実にトリップ状態を維持します。
リセットには手動復帰ボタンまたは遮断器の状態連動による自動解除が設けられます。
この回路は結線図において、補助リレーコイル・自己保持接点・リセット接点・トリップコイルの相互関係を正確に表現する必要があります。
電気図面における表記の実践とCAD活用
続いては、電気図面を実際に作成する際の実践的なポイントとCAD活用方法について確認していきます。
単線結線図と複線結線図の使い分け
電気設備の図面には、単線結線図(SLD:Single Line Diagram)と複線結線図(詳細結線図)の2種類があります。
単線結線図は三相回路を1本の線で表現したシステム概略図であり、受電設備全体の構成・機器配置・保護方式を俯瞰的に把握するために使われます。
過電流継電器は単線結線図において、CTと組み合わせて幹線上に記号で表記されます。
複線結線図は実際の配線を相ごとに表現した詳細図であり、施工・試験・保守に使用されます。
過電流継電器の各端子番号・CT二次配線・制御配線・接点回路のすべてを詳細に表現するのが複線結線図の役割です。
設計では単線結線図でシステムを確定し、施工では複線結線図で具体的な接続を指示するという使い分けが一般的です。
CAD図面での過電流継電器表記のポイント
現代の電気設備設計では、CAD(Computer Aided Design)を使った図面作成が標準となっています。
AutoCAD・CADWe’ll・DRAWINGなどの電気設備用CADソフトには、JIS規格に準拠した電気記号ライブラリが用意されており、これを活用することで規格に沿った図面作成が効率化されます。
過電流継電器の記号を配置する際は、図面縮尺・記号サイズ・テキストの文字サイズをガイドラインに合わせることが重要です。
配線の交差部には接続点(ドット)と非接続(ブリッジ)の区別を明確にし、誤読防止を徹底します。
また、端子番号・機器番号・CT比などの属性情報を記号にリンクさせる「インテリジェント図面」機能を持つCADシステムでは、部品表の自動生成やエラーチェックも可能になります。
図面の読み方と現場での実践ポイント
完成した電気図面を現場で活用するためには、図面を正確に読み取る能力が不可欠です。
過電流継電器の結線図を読む際には、まず電源の流れ方向・CTの極性・継電器端子番号・接点の状態を確認します。
試験・工事の前には図面と実際の結線を照合するダブルチェックが基本です。
特にCT二次側の配線は、誤接続が大きな事故につながるため、極性マークとCT二次端子の対応を丁寧に確認します。
現場では図面に書かれた端子番号が機器本体と一致しているかも必ず確認してください。
製造メーカーや型式によって端子番号の命名規則が異なる場合があるため、機器の取扱説明書・仕様書と図面を並べて確認することが実務上のコツです。
保護回路図面の管理と最新化の重要性
続いては、保護回路の図面管理と、設備変更時の図面最新化について確認していきます。
竣工図面の管理と改訂履歴の重要性
電気設備の図面は、竣工後も設備の変更・改修に合わせて常に最新の状態に保つことが必要です。
古い図面のまま作業を行うと、実際の結線との不一致による誤工事や事故のリスクがあります。
図面の管理では、改訂番号(Rev.)と改訂日・改訂内容を図面に明記し、最新版が明確にわかる状態を維持することが基本です。
デジタル図面管理システムを導入することで、バージョン管理・検索・配布の効率化が実現できます。
重要な設備では、図面の「一元管理責任者」を定め、変更管理プロセスを明文化することが信頼性向上につながります。
整定値変更時の図面更新手順
過電流継電器の整定値が変更された場合、関連する図面すべてを速やかに更新することが求められます。
更新が必要な図面としては、単線結線図の継電器整定値記入欄・保護協調曲線図(TCC)・試験記録票などが挙げられます。
整定変更後は、変更内容を承認・記録し、変更前後の整定値と変更理由を記録に残してください。
また、変更後は必ず動作試験を実施して設定値の正確さを確認することが重要です。
整定値変更の記録は、将来の保護協調設計や事故原因調査において重要な参照資料となります。
デジタル変電所・スマートグリッドにおける図面の変化
デジタル変電所(IECのIEC 61850規格に準拠した変電所)の普及により、保護継電器の結線図の表現方法も変化しつつあります。
従来の銅線ハードワイヤー結線に代わり、光ファイバーや通信ネットワークを介したGOOSE(Generic Object Oriented Substation Event)メッセージで保護信号が伝達されます。
これにより、物理的な配線を示す従来の結線図に加え、通信ネットワーク図・SCL(Substation Configuration Language)によるロジック定義ファイルが図面管理の対象となります。
スマートグリッドの普及に伴い、保護継電器のエンジニアリングはソフトウェアによるロジック設計と密接に結びつくようになっており、図面作成スキルとシステムエンジニアリングスキルの両方が求められる時代になっているといえるでしょう。
まとめ
過電流継電器の電気図面表記では、JIS C 0617規格やANSIデバイスナンバー(51)に基づく記号の正確な使用が基本となります。
結線図では、CT極性・CT比・継電器端子番号・接点の種類・トリップ回路の接続を正確に表現することが求められます。
単線結線図でシステム全体を把握し、複線結線図で詳細な施工・試験情報を提供するという使い分けが重要です。
CADを活用した規格準拠の図面作成と、設備変更に合わせた図面の最新化が、安全な設備管理の基盤となります。
デジタル変電所への移行に伴い、図面の形式も進化しているため、最新の規格・技術動向を継続的に学ぶ姿勢が電気技術者に求められます。