応力-ひずみ関係式とは?弾性域・塑性域の基本とグラフの読み方を解説!(応力-変位曲線)
材料に力を加えたとき、どの程度伸びるのか、いつ元に戻らなくなるのかを理解するうえで、応力-ひずみ関係は欠かせない考え方です。
機械設計、金属加工、品質管理、建築、製品開発などでは、材料の強さを数値とグラフで把握する場面が多くあります。
ただし、応力とひずみ、荷重と変位、弾性域と塑性域は似た文脈で登場するため、違いがあいまいになりやすい部分でもあります。
この記事では、応力-ひずみ関係式の基本、グラフの各部が示す意味、応力-変位曲線との違い、設計や試験での読み取り方をわかりやすく整理します。
応力-ひずみ関係式の意味

それではまず、応力-ひずみ関係式の意味について解説していきます。
応力とひずみの定義
応力とは、材料の内部に生じる力の集中度合いを表す量です。
引張試験では、試験片を両側から引っ張り、そのときに加えた荷重を断面積で割って求めます。
一般的な公称応力は、荷重をF、試験前の断面積をA0として、σ=F/A0で表されます。
応力 σ=荷重 F/初期断面積 A0
単位はPa、MPa、N/mm2などで表します。
一方のひずみは、材料がどれだけ変形したかを、もとの長さに対する割合で示す量です。
試験片の初期長さをL0、伸びをΔLとすると、ひずみε=ΔL/L0となります。
ひずみには単位がありませんが、実務では百分率で表すことも多く、たとえば0.02は2パーセントのひずみを意味します。
応力は材料にかかる力の密度、ひずみは材料の変形割合と覚えると、二つの役割を整理しやすくなります。
同じ1000Nの荷重でも、断面積が小さい部材ほど大きな応力が生じます。
同様に、同じ1mmの伸びでも、もとの長さが短い試験片ほどひずみは大きくなります。
応力-ひずみ関係式の基本
応力-ひずみ関係式は、材料に生じた応力とひずみの対応関係を数式やグラフで表したものです。
もっとも基本的な式は、弾性域で成り立つフックの法則です。
σ=Eε
Eはヤング率、または縦弾性係数と呼ばれる材料固有の値です。
ヤング率が大きい材料は、同じ応力を受けてもひずみが小さく、変形しにくい傾向があります。
鉄鋼はおよそ200GPa前後、アルミニウム合金はおよそ70GPa前後であり、鉄鋼のほうが剛性の高い材料として扱われます。
ここで注意したいのは、ヤング率と強度は同じ意味ではない点です。
ヤング率は変形しにくさを示し、引張強さや降伏強さは破損や永久変形に対する強さを示します。
硬そうに感じる材料が、必ずしも高い強度を持つとは限りません。
樹脂やゴムのように、応力-ひずみ関係が直線にならない材料もあります。
そのため、材料の種類、温度、変形速度、繰り返し荷重の有無まで含めて評価する視点が必要です。
グラフ化する目的
応力-ひずみ関係をグラフにすると、材料がどの段階で弾性変形し、どこから塑性変形へ移るのかを視覚的に確認できます。
横軸にはひずみ、縦軸には応力を取る構成が一般的です。
初期部分の傾きからはヤング率を、折れ曲がる位置からは降伏点を、最大値からは引張強さを読み取れます。
さらに破断時のひずみを確認すれば、その材料がどれほど粘り強く伸びたのかも判断できます。
| グラフ上の項目 | 主な意味 | 設計での見方 |
|---|---|---|
| 初期直線部 | 弾性変形の範囲 | 剛性やたわみの計算に使います |
| 傾き | ヤング率 | 変形しにくさを比較します |
| 降伏付近 | 永久変形の始まり | 許容応力の基準になります |
| 最大応力 | 引張強さ | 破断に対する強度を確認します |
| 破断点 | 破壊時の状態 | 延性や靭性の検討に役立ちます |
グラフは単に試験結果を並べるための図ではありません。
材料選定、部品形状、肉厚、公差、使用荷重を検討するための基礎資料になります。
弾性域と弾性変形
続いては、弾性域と弾性変形を確認していきます。
荷重を除くと戻る領域
弾性域とは、加えた荷重を取り除いたときに、材料がほぼ元の形状と寸法に戻る範囲です。
ばねを軽く引っ張って手を離すと元の長さに戻る現象は、弾性変形のわかりやすい例といえるでしょう。
この範囲では、応力とひずみがほぼ比例し、応力-ひずみグラフは原点から伸びる直線として現れます。
ただし、完全に理想的な直線になるとは限りません。
測定機の分解能、治具のたわみ、試験片の取り付け状態、材料組織の影響によって、細かなばらつきが出る場合があります。
設計時に重要なのは、使用中の応力を弾性域内に抑えられるかどうかです。
繰り返し使う部品では、わずかな永久変形でも組み付け不良や精度低下につながることがあります。
比例限度と弾性限度
比例限度は、応力とひずみの比例関係が保たれる上限を指します。
この範囲であれば、フックの法則を用いた計算が比較的正確に行えます。
弾性限度は、荷重を取り除いたあとに永久ひずみが残らない上限です。
比例限度をわずかに超えても、材料によっては元に戻る場合があり、比例限度と弾性限度が完全に同じ位置になるとは限りません。
実際の材料試験では、この境界を明瞭に見分けにくいこともあります。
そこで工業材料の評価では、後述する耐力を降伏の指標として使うケースが多くなります。
比例限度は直線関係が続く境界です。
弾性限度は元に戻る性質が保たれる境界であり、目的に応じて区別して考えます。
ヤング率と部品のたわみ
ヤング率は、引張試験だけでなく、梁や軸、板金部品のたわみを考える際にも重要です。
たとえば同じ形状の板を同じ力で押しても、ヤング率が高い材料ほどたわみ量は小さくなります。
精密機器のフレーム、治具、測定装置の構造体では、強度だけでなく剛性が求められます。
強度に余裕があっても、たわみが大きければ位置ずれ、振動、シール不良、接触圧の低下などが起こるためです。
変形を許容できない部品では、応力値だけでなく変位量も同時に評価することが大切です。
また、温度が上がるとヤング率が低下する材料もあります。
常温で問題がなくても、高温環境や長時間使用では挙動が変わる可能性を考慮しましょう。
塑性域と降伏現象
続いては、塑性域と降伏現象について確認していきます。
永久変形が始まる仕組み
塑性域とは、荷重を取り除いても材料が元の形状に完全には戻らず、永久変形が残る領域です。
金属材料では、結晶内部のすべりや転位の移動によって塑性変形が進みます。
身近な例では、クリップを何度か曲げると元の形に戻らなくなる状態が該当します。
塑性変形は必ずしも不具合ではありません。
プレス加工、曲げ加工、絞り加工、鍛造などでは、材料を塑性域まで変形させて目的の形状を作ります。
一方で、ボルト、シャフト、構造部材、精密部品のように形状維持が重要な部品では、意図しない塑性変形を避ける必要があります。
塑性域への進入は、部品が壊れたことではなく、元に戻らない変形が始まった状態と理解するとよいでしょう。
降伏点と耐力の違い
低炭素鋼の一部では、応力-ひずみ曲線に明確な降伏点が現れます。
上降伏点のあとに応力が少し低下し、比較的小さな応力のままひずみが増える降伏棚が見られることがあります。
しかし、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅合金などでは、はっきりした降伏点が現れない材料も少なくありません。
その場合は、0.2パーセント耐力を降伏強さの目安として用います。
0.2パーセント耐力は、ひずみ軸上で0.2パーセントずらした直線と応力-ひずみ曲線の交点に対応する応力です。
この値は、除荷後に0.2パーセントの永久ひずみが残る目安として扱われます。
図面や材料証明書で見かける耐力は、設計上とても重要な値です。
引張強さだけを見て材料を選ぶと、破断前に大きく変形するリスクを見落とすことがあります。
形状を保つことが目的なら、引張強さより先に耐力や降伏強さを確認する視点が必要です。
加工硬化とくびれの発生
多くの金属材料は、降伏後もすぐに破断するわけではありません。
塑性変形が進む過程で加工硬化が起こり、さらに変形させるために大きな応力が必要になることがあります。
このためグラフは再び上昇し、最大応力である引張強さに達します。
その後、試験片の一部で断面積が局所的に小さくなるくびれが生じると、公称応力は低下して見えます。
最終的には、くびれ部分から破断に至ります。
くびれの発生は、材料が均一に変形できる限界に近づいたサインです。
板金の深絞りや引張成形では、局所的なくびれが割れにつながるため、均一伸びや加工硬化特性の評価が重要になります。
降伏後に応力が上がるからといって、無制限に荷重を増やせるわけではありません。
塑性域では残留変形、寸法変化、疲労寿命への影響を前提に判断します。
応力-ひずみグラフの読み方
続いては、応力-ひずみグラフの読み方を確認していきます。
縦軸と横軸の確認
グラフを読むときは、最初に縦軸と横軸が何を表すかを確認します。
一般的な応力-ひずみ曲線では、縦軸が応力、横軸がひずみです。
縦軸の単位にはMPaやN/mm2が使われ、横軸には無次元量またはパーセント表示が使われます。
横軸が0.01刻みなのか、1パーセント刻みなのかで読み取る数値が変わるため、表示形式を見落とさないようにしましょう。
また、縦軸の最大値が大きく取られているグラフでは、初期直線部の差が見えにくくなることがあります。
グラフの形だけで判断せず、軸の単位、縮尺、試験条件まで確認する習慣が精度の高い評価につながります。
代表値の読み取り手順
材料データを比較する際は、同じ順序で数値を見ると混乱を減らせます。
| 確認順 | 確認する値 | 判断できる内容 |
|---|---|---|
| 一番目 | ヤング率 | 初期の剛性とたわみやすさ |
| 二番目 | 耐力または降伏強さ | 永久変形を避けるための目安 |
| 三番目 | 引張強さ | 最大荷重に耐える能力 |
| 四番目 | 破断伸び | 延性と成形しやすさ |
| 五番目 | 曲線下の面積 | 破断までに吸収できるエネルギーの目安 |
曲線下の面積が大きい材料は、一般に靭性が高い傾向があります。
ただし、厳密な靭性評価では、試験方法や応力状態に応じた別の試験を行うこともあります。
引張試験のグラフだけで、あらゆる破壊特性を判断できるわけではありません。
用途に応じて、シャルピー衝撃試験、疲労試験、クリープ試験、硬さ試験などを組み合わせることが大切です。
材料別に見られる曲線の特徴
軟鋼は、弾性域、降伏現象、加工硬化、くびれ、破断という流れが比較的わかりやすく現れる材料です。
アルミニウム合金は明確な降伏棚が出にくく、耐力で評価されることが多いでしょう。
ステンレス鋼は種類によって特性差が大きく、加工硬化の影響を強く受ける材料もあります。
樹脂は温度や引張速度による影響が大きく、短時間では硬く見えても、長時間荷重では変形が進む場合があります。
ゴムやエラストマーでは大ひずみ領域を扱うため、金属と同じ直線近似だけでは説明しにくいケースもあります。
応力-ひずみ曲線は材料の個性を示す図であり、材料名だけで一律に扱わないことが重要です。
同じ材質記号でも、熱処理、圧延方向、板厚、調質、製造ロットによって値が変わる可能性があります。
応力-変位曲線との違い
続いては、応力-変位曲線との違いを確認していきます。
荷重-変位曲線の考え方
応力-変位曲線という表現は、厳密には荷重-変位曲線を指して使われることが多い言葉です。
縦軸に荷重、横軸に変位を取ったグラフは、試験機が直接測定したデータをそのまま表示しやすい特徴があります。
荷重はNやkN、変位はmmで表されます。
たとえば、部品を押し込む試験、ばねの圧縮試験、接着部の剥離試験では、荷重-変位曲線が実務でよく用いられます。
このグラフからは、どの変位でどれだけの力が必要か、荷重が急に落ちる位置はどこかを把握できます。
しかし、試験片の断面積や標点距離が異なる場合、単純に荷重-変位曲線を比べても材料そのものの強さを公平に比較しにくい点に注意が必要です。
正規化による比較
応力-ひずみ曲線は、荷重を断面積で割り、変位を初期長さで割ることで、試験片の大きさの違いをある程度補正した表現です。
そのため、異なる寸法の試験片や異なる製品から採取した試験片でも、材料特性として比較しやすくなります。
| 比較項目 | 荷重-変位曲線 | 応力-ひずみ曲線 |
|---|---|---|
| 縦軸 | 荷重 | 応力 |
| 横軸 | 変位 | ひずみ |
| 寸法の影響 | 大きく受けます | 比較的小さくできます |
| 主な用途 | 製品や構造の挙動確認 | 材料特性の比較と設計 |
| 読み取る代表値 | 最大荷重、変位、剛性 | ヤング率、耐力、引張強さ |
部品の実際の動きを見たい場合は荷重-変位曲線、材料そのものを比較したい場合は応力-ひずみ曲線が基本的な使い分けです。
両方のグラフを用意すると、材料特性と製品挙動を行き来しながら検討できます。
真応力と公称応力の使い分け
一般的な引張試験で使われる公称応力は、試験前の断面積を基準に計算します。
一方、変形中の実際の断面積を使って求める値が真応力です。
くびれが発生した後は断面積が大きく減少するため、公称応力と真応力の差が大きくなります。
公称応力では最大荷重点の後に曲線が下がりますが、真応力では破断直前まで上昇傾向を示す場合があります。
公称応力 σn=F/A0
真応力 σt=F/A
Aは変形中の実断面積です。
通常の材料選定や規格値の比較では、公称応力と公称ひずみを使う場面が中心です。
ただし、塑性加工の解析や大変形を伴うシミュレーションでは、真応力-真ひずみのデータが必要になることがあります。
どの応力とひずみを使ったデータなのかを明確にしないと、計算結果や材料比較にずれが生じます。
設計と材料試験での活用
続いては、設計と材料試験での活用について確認していきます。
許容応力の考え方
設計では、材料の引張強さをそのまま使用荷重の基準にすることは一般的ではありません。
想定外の荷重、材料ばらつき、加工傷、温度変化、経年劣化などを考慮し、安全率を見込んで許容応力を設定します。
永久変形を避けたい部品では、耐力や降伏強さを基準に考えることが多くなります。
破断してはならない部材では、引張強さだけでなく、疲労強度、座屈、応力集中、接合部の強度も確認する必要があります。
材料強度の数値は、設計条件そのものではありません。
使用環境、荷重の種類、安全率、寿命を重ねて、初めて実用的な許容値になります。
応力集中が起こりやすい穴、切り欠き、ねじ部、段差部では、平均的な応力より局部的な最大応力が大きくなることがあります。
形状を滑らかにつなぐ、Rを設ける、板厚変化を急にしないといった工夫も、応力を抑えるうえで有効です。
引張試験の条件管理
応力-ひずみ曲線の信頼性は、試験条件によって大きく左右されます。
試験片の形状や採取方向、標点距離、引張速度、温度、湿度、つかみ部の状態を適切に管理することが重要です。
金属材料では、JIS規格などに基づく試験方法が用いられ、試験片形状や測定方法が定められています。
樹脂では、試験速度や温度の違いによって結果が変わりやすいため、材料データシートの条件を確認する必要があります。
異なる試験条件で得た数値を、同じ性能値として単純比較しないことが基本です。
伸び計を試験片に取り付けてひずみを直接測定するか、クロスヘッド変位から推定するかによっても、初期領域の精度は変わります。
高精度にヤング率を求める場合は、試験機全体のたわみを含むクロスヘッド変位だけで判断しない配慮が求められます。
解析ソフトへのデータ入力
有限要素法による構造解析では、材料のヤング率、ポアソン比、降伏応力、加工硬化特性などを入力して計算を行います。
弾性解析だけで十分な場合は、ヤング率とポアソン比を中心に設定します。
塑性変形まで扱う解析では、応力-ひずみ曲線を複数点のデータとして入力するケースがあります。
このとき、公称値を入力すべきか、真応力-真塑性ひずみへ変換した値を入力すべきかは、ソフトの仕様と解析目的で異なります。
材料データをそのまま貼り付ける前に、入力画面の定義を必ず確認しましょう。
解析結果が実験と合わない場合は、材料定数だけでなく、境界条件、接触条件、摩擦係数、メッシュサイズ、荷重の与え方も見直す必要があります。
応力-ひずみ曲線は解析精度を支える重要な入力値であり、単なる参考グラフではありません。
応力-ひずみ関係式のまとめ
応力-ひずみ関係式は、材料に加わる力と変形の関係を把握するための基本的な考え方です。
弾性域では荷重を除けば元に戻り、応力とひずみはフックの法則に従っておおむね比例します。
塑性域に入ると永久変形が残るため、形状維持が必要な部品では耐力や降伏強さを意識した設計が必要になります。
グラフでは、初期直線部の傾きからヤング率を、降伏付近から耐力を、最大応力から引張強さを読み取れます。
また、破断伸びや曲線の形状を見ることで、材料の延性や加工性についても判断しやすくなるでしょう。
荷重-変位曲線は製品や構造の挙動を確認するのに適し、応力-ひずみ曲線は寸法の影響を補正して材料特性を比較するのに適しています。
使用目的に合わせて二つのグラフを使い分けることが、適切な材料選定と安全な設計への近道です。
数値だけを見て結論を急がず、試験条件、温度、加工状態、荷重の繰り返しまで含めて読み解くことで、応力-ひずみ関係を実務に活かせます。