曲げ強度は、部材や材料が曲げ荷重を受けたときに、どの程度まで破壊や降伏に耐えられるかを表す重要な指標です。
機械設計、建築、治具設計、樹脂製品の評価などでは、荷重だけでなく、支点間距離、断面形状、断面係数、材料特性を組み合わせて判断する必要があります。
特に3点曲げ試験では、試験片の中央に荷重を加えて最大曲げ応力を求めるため、計算式の使い分けを理解しておくことが大切です。
この記事では、曲げ強度の基本公式から断面係数を使った計算、3点曲げ強度の求め方、MPaへの単位換算、設計時の注意点までをわかりやすく整理します。
曲げ強度計算の基本公式

それではまず曲げ強度計算の基本公式について解説していきます。
曲げ応力と曲げ強度の違い
曲げ応力とは、荷重によって部材がたわんだとき、断面内部に生じる応力のことです。
梁の上側には圧縮応力、下側には引張応力が発生し、中央付近には応力がほぼゼロとなる中立軸が存在します。
一方の曲げ強度は、材料が破断する、または規定の変形に達するまでに耐えた最大応力を指します。
曲げ応力は使用中に発生する力の状態であり、曲げ強度は材料側の耐力を示す値と考えると理解しやすいでしょう。
設計では、計算で求めた曲げ応力が材料の許容応力を下回っているかを確認します。
試験結果として得られた曲げ強度をそのまま設計許容値にするのではなく、安全率、使用環境、繰返し荷重、加工状態も加味することが必要です。
基本的な曲げ応力の公式は、曲げモーメントを断面係数で割る形です。
曲げ応力 σ = 曲げモーメント M ÷ 断面係数 Z
単位をNとmmで統一すれば、応力はN mm²となり、MPaと同じ値として扱えます。
曲げモーメントの考え方
曲げモーメントは、部材を曲げようとする作用の大きさです。
荷重が大きいほど、また支点から荷重点までの距離が長いほど、曲げモーメントは大きくなります。
単純支持梁の中央に集中荷重を加える3点曲げでは、最大曲げモーメントは中央部に発生します。
荷重をP、支点間距離をLとした場合、中央の最大曲げモーメントはP×L÷4で求められます。
この値が大きくなるほど、中央断面での破壊リスクも高まります。
同じ荷重でも支点間距離が長くなると曲げに不利になるため、試験条件や設計条件を比較するときはLの違いを見落とさないようにしましょう。
応力の単位とMPaの扱い
曲げ強度や曲げ応力には、一般的にMPaが用いられます。
1MPaは1N mm²と等しく、機械設計ではNとmmを使う計算体系と相性のよい単位です。
たとえば曲げモーメントをN mm、断面係数をmm³で計算すると、結果はN mm²になります。
ここでmやPaを混在させると、桁が大きくずれてしまうことがあります。
材料メーカーのカタログにはMPa、GPa、N mm²が混在する場合もあるため、計算前に単位をそろえる習慣が欠かせません。
| 項目 | 代表的な単位 | 換算上のポイント |
|---|---|---|
| 荷重 P | N | kgfではなくNへ統一します |
| 長さ L | mm | 断面寸法もmmで統一します |
| 曲げモーメント M | N mm | 荷重と距離の積です |
| 断面係数 Z | mm³ | 断面形状により式が異なります |
| 曲げ応力 σ | MPa | N mm²と同じ値です |
断面係数による強度判定
続いては断面係数による強度判定を確認していきます。
断面係数の役割
断面係数は、断面形状が曲げに対してどれだけ有利かを示す値です。
同じ材料、同じ断面積でも、断面係数が大きい形状のほうが曲げ応力を小さくできます。
これは、材料が中立軸から遠い位置に配置されるほど、曲げに抵抗しやすくなるためです。
中実の丸棒より中空パイプが曲げに有利な場面があるのも、この考え方によります。
断面係数を大きくすることは、単純に肉厚を増やすこととは別の設計手法です。
重量を抑えながら剛性や強度を確保したい場合、断面の高さ、フランジ形状、リブ配置などを検討する価値があります。
長方形断面の断面係数
幅をb、高さをhとする長方形断面では、曲げる方向に対する高さhが特に重要です。
断面係数は、Z=b×h²÷6で求められます。
高さが2倍になると断面係数は4倍になるため、幅を増やすより高さを増やすほうが曲げに有利なケースが多くなります。
ただし、薄い板を高くしても横座屈や局部座屈が起こるおそれがあります。
曲げ強度だけでなく、部材の支持条件、接合方法、板厚、荷重方向まで確認することが大切です。
長方形断面の計算例です。
幅bが20mm、高さhが10mmの場合、Zは20×10²÷6となります。
断面係数は約333mm³です。
最大曲げモーメントが10000N mmなら、曲げ応力は10000÷333で約30MPaになります。
丸棒と中空円形断面の断面係数
直径dの中実丸棒では、断面係数はπ×d³÷32で求めます。
丸棒は方向による性能差が小さく、回転軸、ピン、シャフトなどで扱いやすい断面形状です。
外径D、内径dの中空円形断面では、断面係数はπ×D⁴-d⁴を32×Dで割って求めます。
中空断面は、中心近くの材料を減らしながら外周側に材料を残せるため、重量効率に優れます。
曲げに効くのは中立軸から離れた部分という原則を押さえると、パイプ構造の利点を理解しやすくなります。
| 断面形状 | 断面係数 Z | 設計上の特徴 |
|---|---|---|
| 長方形 | b×h²÷6 | 高さの影響が大きい形状です |
| 中実丸棒 | π×d³÷32 | 方向性が少なく扱いやすい断面です |
| 中空円形 | π×D⁴-d⁴を32×Dで割る | 軽量化と曲げ性能を両立しやすい形状です |
| H形鋼 | 断面二次モーメント÷最外縁距離 | 上下フランジが曲げに有効です |
3点曲げ強度計算式
続いては3点曲げ強度計算式を確認していきます。
3点曲げ試験の支持条件
3点曲げ試験は、試験片の両端を2つの支点で支持し、中央に1つの荷重を加える試験方法です。
金属、プラスチック、セラミックス、複合材料、木材などの曲げ特性を比較する際に広く使われます。
試験片は中央で最大の曲げモーメントを受け、一般に引張側の最外表面から亀裂や破断が始まります。
支点の位置、押し込み治具の先端半径、試験速度、試験片の寸法は、結果に影響を与える要素です。
材料の曲げ強度を比較するなら、規格に沿って条件をそろえる必要があります。
3点曲げ試験の数値は、試験片寸法と支点間距離を含む条件付きの結果として読み取ることが重要です。
長方形試験片の3点曲げ公式
幅をb、厚さをh、支点間距離をL、破断時または最大時の荷重をPとする長方形試験片では、3点曲げ強度は次の式で求められます。
3点曲げ強度 σf = 3×P×L ÷ 2×b×h²
PはN、Lとbとhはmmでそろえます。
計算結果はMPaとして扱えます。
この式は、単純支持梁の最大曲げモーメントP×L÷4と、長方形断面の断面係数b×h²÷6を組み合わせたものです。
つまり、3点曲げ強度の計算式は特別な別公式ではなく、曲げ応力の基本式を試験条件に当てはめた形といえます。
厚さhは二乗で効くため、ノギスやマイクロメータによる測定誤差が結果を左右しやすい点に注意しましょう。
計算例と荷重条件
幅10mm、厚さ4mm、支点間距離64mmの試験片が、最大荷重200Nで破断したとします。
3×200×64を2×10×4²で割ると、曲げ強度は120MPaです。
この値は、試験片が最大荷重時に示した表面応力の推定値になります。
材料が弾性域を超えて大きく変形する場合は、単純な梁理論と実際の応力状態に差が生じることもあります。
樹脂のようにたわみが大きい材料では、規格で定められたたわみ時の応力を評価する場合もあります。
破断荷重だけでは材料の優劣を正確に比べられないため、必ず断面寸法と支点間距離を含めて強度へ換算しましょう。
3点曲げ強度を求める際は、荷重Pを最大荷重として使うのか、破断荷重として使うのかを試験目的に合わせて明確にします。
破断しない材料では、規定たわみ時の荷重や降伏に相当する荷重を用いることがあります。
材料特性と許容応力
続いては材料特性と許容応力を確認していきます。
引張強さとの関係
曲げ強度と引張強さは関連しますが、常に同じ数値になるわけではありません。
引張試験では試験片全体にほぼ均一な引張応力が加わるのに対し、曲げ試験では表面付近に最大応力が集中します。
脆性材料では曲げ強度が引張強さより高く見える場合があります。
これは、曲げ試験で最大応力が断面全体ではなく表面近傍に限られることや、欠陥の影響範囲が異なることが理由です。
材料表にある引張強さをそのまま曲げ強度の代用にする場合は、根拠と適用範囲を確認してください。
降伏点と安全率
延性金属では、破断より先に降伏が設計上の問題となることがあります。
鉄鋼やアルミニウム合金の部材では、曲げ応力が降伏強さに近づくと恒久的な変形が残る可能性があります。
このため、実務では材料強度を安全率で割った許容応力と、計算上の曲げ応力を比較します。
安全率は用途、破損時の影響、荷重の不確かさ、使用頻度、検査体制によって変わります。
人の安全に関わる部材や停止損失が大きい設備では、安全率を一律に小さくしない姿勢が求められます。
静的な荷重だけを前提にせず、衝撃、振動、偏荷重、経年変化も考慮しましょう。
疲労と繰返し曲げ
繰返し曲げを受ける部材では、1回の荷重では壊れなくても、長期間で疲労破壊に至る場合があります。
回転軸、板ばね、搬送装置のアーム、車両部品などでは、疲労強度の確認が重要です。
疲労破壊は、穴、キー溝、ねじ部、溶接止端、急な段差などの応力集中部から始まりやすい傾向があります。
断面係数を大きくするだけでなく、角部にRを設ける、表面を滑らかにする、腐食を防ぐといった対策も有効です。
平均応力がある場合や荷重振幅が変動する場合は、より慎重な評価が必要になるでしょう。
曲げ応力が材料の静的強度より低くても、繰返し回数が多ければ疲労破壊の可能性があります。
繰返し荷重を受ける設計では、最大応力だけでなく応力振幅と応力集中を確認します。
計算精度を高める確認項目
続いては計算精度を高める確認項目を確認していきます。
荷重位置と支持方法
基本公式は、荷重位置と支持条件が想定どおりであることを前提にしています。
3点曲げでは荷重が中央にある場合の式を使いますが、荷重点が中央からずれると最大曲げモーメントの位置と大きさが変わります。
片持ち梁、両端固定梁、4点曲げでは、同じ荷重でも曲げモーメント図が異なります。
支持部にガタがある、固定端が実際には回転する、荷重が面で分散しているといった状況も、計算結果に影響します。
公式を選ぶ前に、部材がどのように支えられ、どこに力が加わるかを図で整理することが実務上の近道です。
断面欠損と応力集中
計算で用いる断面は、穴や切欠きのない理想形状ではなく、実際に最も弱くなる断面を対象にします。
ボルト穴、配線穴、キー溝、ねじ加工部、溶接部の近くでは、有効断面が小さくなることがあります。
さらに、形状が急に変化する部分では、平均的な曲げ応力より局所応力が高くなります。
単純な断面係数だけでは評価が不足する場合、応力集中係数や有限要素法による解析を活用します。
加工傷や腐食による表面欠陥も、特に疲労寿命へ影響しやすい要素です。
たわみ量との併用
曲げ強度に問題がなくても、たわみが大きすぎると機能上の不具合が起こることがあります。
たとえば精密機器のフレームでは、破壊しなくても位置ずれ、干渉、振動、測定誤差につながるでしょう。
たわみは材料のヤング率、荷重、支点間距離、断面二次モーメントに左右されます。
曲げ強度の計算で使う断面係数と、たわみ計算で使う断面二次モーメントは似ていますが、役割が異なります。
強度は壊れにくさ、剛性はたわみにくさを示す指標です。
設計の完成度を高めるには、両方を確認することが望ましいといえます。
曲げ計算では、強度判定とたわみ判定を分けて確認します。
応力が許容範囲でも、たわみが許容値を超えるなら、断面形状や支点間距離の見直しが必要です。
曲げ強度計算のまとめ
曲げ強度の計算では、まず荷重条件と支持条件を整理し、最大曲げモーメントを求めます。
次に、断面形状に応じた断面係数を使い、曲げ応力をMPaで算出します。
3点曲げ試験の長方形試験片では、3×P×Lを2×b×h²で割ることで曲げ強度を求められます。
断面の高さは二乗で影響するため、寸法測定と単位管理は特に重要です。
また、材料の曲げ強度だけでなく、降伏強さ、安全率、疲労、応力集中、たわみ量まで確認すると、実用的な設計判断につながります。
曲げ強度の公式は計算の出発点であり、実際の安全性は使用条件を含めて評価することが大切です。