断面一次モーメントの求め方は?重心との関係と公式をわかりやすく解説!
断面一次モーメントは、材料力学や構造計算で断面の位置的な偏りを表す量です。梁のせん断応力を計算するときや、複雑な形の図形の重心を求めるときに使われます。
公式だけを暗記すると、どの軸から距離を測るのか、なぜ重心軸では値がゼロになるのかで混乱しがちです。この記事では基本公式、計算手順、重心との関係、代表的な断面での考え方を順に解説します。
断面一次モーメントの公式と基本の求め方
それではまず断面一次モーメントの公式について解説していきます。
面積と距離で表す基本公式
断面一次モーメントは、面積に基準軸から重心までの距離を掛けて求める量です。
断面一次モーメントは、断面の各部分が基準軸からどれほど離れているかを面積とともに表します。単位面積を足し合わせる考え方で定義されるため、形が複雑でも分割すれば計算できます。
長方形のように重心位置がすぐにわかる図形では、全体の面積と重心までの距離を使う方法が便利です。断面の上側や下側だけを取り出してせん断応力を求める場合にも、同じ考え方を使います。
図形全体をまとめて扱える場合
Qx = Aȳ
A は対象部分の面積で単位は mm² または m²です。ȳ は x 軸から対象部分の重心までの距離で単位は mm または mです。Qx の単位は mm³ または m³になります。
ここで大切なのは、距離を測る出発点が必ず基準軸であることです。図形の端から測った距離をそのまま代入すると、別の軸に対する値になってしまいます。
例えば面積 200 mm² の小長方形の重心が、x 軸から 30 mm 上にあるなら、Qx は 6000 mm³です。面積が同じでも重心が軸から遠いほど、断面一次モーメントは大きくなります。
符号も見落とせません。座標の取り方によって、基準軸より上側を正、下側を負として扱う場合があります。
面積だけではなく、基準軸からの距離を必ず組み合わせる点が断面一次モーメントの特徴です。 符号を含めて扱うことで、重心の位置も計算できるようになります。
長方形による計算手順
長方形の断面一次モーメントは、面積と長方形の重心位置を使えば短時間で求められます。
幅 b、高さ h の長方形を考えると、面積は b h です。底辺に重なる x 軸から長方形の重心までの距離は h の半分になります。
重心までの距離 ȳ = 50 ÷ 2 = 25 mm
Qx = Aȳ = 4000 × 25 = 100000 mm³
この結果は、長方形全体が底辺より上側にあるため正の値になります。高さ 50 mm の中央を通る重心軸を基準に取り直すと、同じ長方形の断面一次モーメントはゼロです。
計算では、面積の単位と距離の単位をそろえる必要があります。面積を mm²、距離を m のまま掛けると、途中の数値が正しくても単位の整合性が失われます。
高さ方向を二つに分けた場合は、各部分の面積とそれぞれの重心位置を使って足し合わせます。分割後の小長方形ごとに、基準軸からの距離を測ることがポイントです。
断面を分割したときは、各部分の図心から同じ基準軸までの距離を使います。 分割線からの距離を使う場合は、基準軸との差を加減算して補正しましょう。
せん断応力の計算で使う Q は、断面全体ではなく、注目する位置より上または下の部分面積について求めることがあります。その場合も、式そのものは Aȳ で変わりません。
重心との関係と重心軸の性質
続いては重心との関係を確認していきます。
重心位置を求めるための考え方
複数の図形を組み合わせた断面では、断面一次モーメントを使って全体の重心位置を求めます。
全体の面積を A とし、基準軸に関する断面一次モーメントを Qx とすると、重心までの距離は Qx を A で割った値です。これは各部分の面積が重心をどちら側へ引っ張るかを、距離付きで合計した結果と考えられます。
Ai は各部分の面積で単位は mm²です。yi は基準軸から各部分の重心までの距離で単位は mmです。求めた ȳ の単位は mmになります。
例えば、下側に大きな面積が集まる断面では、全体の重心も下側へ近づきます。上側に細い部材を追加しても、面積が小さければ重心位置への影響は限られます。
穴や切欠きは、負の面積として扱う方法が一般的です。穴の面積と、その穴の重心位置による断面一次モーメントを全体から差し引きます。
重心位置は、面積の単純な平均ではなく、面積と距離を考慮した平均で決まります。 面積が大きい部分ほど、重心位置を強く左右するためです。
複合断面を計算するときは、各部分に番号を付けた表を作るとミスを減らせます。面積、重心座標、面積と座標の積を同じ行に並べると、合計の意味も確認しやすくなります。
| 部分 | 面積 Ai | 重心位置 yi | Ai yi |
|---|---|---|---|
| 下側の長方形 | 大きい | 基準軸に近い | 下側へ重心を寄せる |
| 上側の長方形 | 小さい | 基準軸から遠い | 上側への影響を与える |
| 円形の穴 | 負の面積 | 穴の中心位置 | 全体から差し引く |
表を使うと、穴の符号や距離の入力漏れを発見しやすくなります。左右方向の重心も必要な場合は、x 座標についても同じ形式で計算します。
重心軸でゼロになる理由
重心を通る軸に対する断面一次モーメントは、原則としてゼロになります。
重心軸より上側にある面積は正の寄与を持ち、下側にある面積は負の寄与を持ちます。重心はそれらの寄与がちょうどつり合う位置として定義されるため、合計値はゼロです。
左右方向についても同様です。図形の縦方向の重心軸に対して計算すれば、左側と右側の断面一次モーメントが相殺されます。
ただし、図形が左右対称でなくても重心軸なら値はゼロです。対称性は重心の位置を見つける助けになりますが、ゼロになるための必須条件ではありません。
重心軸に関する断面一次モーメントがゼロになることは、重心の基本的な定義そのものです。 この性質は、計算結果を検算する際にも役立ちます。
例えば T 字形断面では、水平な重心軸は断面の中央高さとは一致しないことが多いでしょう。上下に分けて計算した寄与の合計がゼロになれば、重心位置の整合性を確認できます。
基準軸が重心軸からずれている場合、断面一次モーメントはゼロではありません。むしろ、その値を全断面積で割れば、二つの軸の距離を把握できます。
複合断面と穴あき断面の計算方法
続いては複合断面と穴あき断面の計算方法を確認していきます。
分割による断面一次モーメントの合計
L 字形や T 字形などの複合断面は、長方形や円などの基本図形へ分割して計算します。
各部分の断面一次モーメントを求めた後、同じ基準軸について符号を考慮しながら合計します。部分ごとに異なる基準から測った距離を混在させると、正しい合計にはなりません。
分割の仕方は一通りではありません。重なりがなく、面積と重心位置を簡単に求められる形に分けることが実務では重要です。
T 字形断面なら、フランジ部分とウェブ部分を二つの長方形として扱えます。接合部で面積が重複しないよう、片方の寸法範囲を明確に決める必要があります。
複合断面では、部分ごとの Aȳ を足し合わせた値が全体の断面一次モーメントになります。 重心計算では、その合計を全体面積で割ります。
計算表では、面積を正、穴や除去部分を負として記載すると判断しやすくなります。距離そのものは座標として扱い、符号は座標系の約束に従って統一しましょう。
| 断面の種類 | 分割方法 | 注意点 |
|---|---|---|
| T 字形 | フランジとウェブの長方形 | 重なり面積を二重計上しない |
| L 字形 | 二つの長方形 | 角部の重複を差し引く |
| コの字形 | 三つの長方形 | 左右部材の座標を区別する |
| 段付き断面 | 高さごとの長方形 | 全て同じ基準軸から測る |
分割後の部分数が増えても、計算の原理は変わりません。図面上の寸法線と計算表の座標が対応しているかを一行ずつ確認すると、転記ミスを防げます。
穴を負の面積として扱う方法
穴あき断面では、穴がなかったと仮定した外形から、穴の面積と断面一次モーメントを差し引きます。
丸穴であれば、穴の面積は円の公式で求め、穴の中心をその部分の重心として扱います。穴の形が長方形でも円形でも、負の面積として扱う考え方は同じです。
A外形と A穴 はそれぞれの面積で単位は mm²です。y外形と y穴 は基準軸から各重心までの距離で単位は mmです。Qx の単位は mm³です。
穴の中心が基準軸から遠いほど、重心位置への影響は大きくなります。小さな穴でも端部近くにあると、面積の割に大きく重心を移動させることがあります。
穴の面積だけを全体面積から引き、断面一次モーメントを引き忘れる誤りはよくあります。重心を求める計算では、分母の面積と分子の面積掛ける距離の両方を修正しなければなりません。
穴は負の面積として、面積と断面一次モーメントの両方に反映させます。 穴の位置まで負にするのではなく、座標の符号と面積の符号を混同しないことが大切です。
中心線上に穴がある対称断面では、その方向の重心位置は変わらない場合があります。一方で、上下または左右のどちらかに偏って穴を開けると、重心は穴とは反対の方向へ移動します。
加工図面を扱う場面では、穴径だけでなく穴中心の座標を正確に読み取る必要があります。中心位置が数 mm ずれるだけでも、薄い断面では結果への影響が無視できないことがあります。
せん断応力における断面一次モーメントの役割
続いてはせん断応力における断面一次モーメントの役割を確認していきます。
せん断応力の公式に現れる Q
梁のせん断応力を求める公式では、断面一次モーメント Q が応力分布を決める重要な要素になります。
一般的な梁理論では、ある位置におけるせん断応力は、せん断力、断面一次モーメント、断面二次モーメント、幅を用いて表します。ここでの Q は、断面全体ではなく、その位置より上側または下側の部分断面について求める値です。
τ はせん断応力で単位は N/mm²です。V はその断面に作用するせん断力で単位は Nです。Q は注目位置より片側の部分断面の断面一次モーメントで単位は mm³です。I は断面二次モーメントで単位は mm⁴、b はその位置での断面幅で単位は mmです。
式の Q は、通常、全断面の重心軸に対して計算します。対象となる部分面積の重心までの距離を使うため、断面のどの高さを選ぶかで Q の値は変化します。
長方形断面では、上端と下端で部分面積がゼロになるため Q もゼロです。そのため、自由表面におけるせん断応力はゼロになります。
せん断応力の式に入れる Q は、全断面ではなく注目する位置で切り出した部分の値です。 この区別を誤ると、応力の分布形状を正しく求められません。
中立軸付近では、上下いずれかの部分面積に対する Q が大きくなる傾向があります。長方形断面のせん断応力が中央付近で最大となる理由の一つです。
せん断応力の計算は、弾性範囲にあり、通常の梁理論が適用できる条件を前提とします。極端に短い梁や局部的な荷重作用部では、単純式だけでは評価が難しい場合があります。
断面一次モーメントと断面二次モーメントの違い
断面一次モーメントと断面二次モーメントは名前が似ていますが、用途も単位も異なる量です。
断面一次モーメントは面積に距離を一回掛けるため、単位は mm³です。主に重心位置の計算やせん断応力の計算に使われます。
断面二次モーメントは面積に距離の二乗を掛けるため、単位は mm⁴になります。曲げに対する断面の抵抗性を表し、梁のたわみや曲げ応力を扱う場面で重要です。
遠くにある面積は、断面一次モーメントにも影響します。断面二次モーメントでは距離が二乗されるため、基準軸から遠い部分の影響がさらに大きくなります。
| 比較項目 | 断面一次モーメント | 断面二次モーメント |
|---|---|---|
| 基本的な形 | ∫y dA | ∫y² dA |
| 単位 | mm³ | mm⁴ |
| 主な用途 | 重心、せん断応力 | 曲げ応力、たわみ |
| 重心軸での値 | ゼロ | 一般にゼロではない |
| 距離の影響 | 距離に比例 | 距離の二乗に比例 |
重心軸に対してゼロになるのは断面一次モーメントであり、断面二次モーメントではありません。
二つの量を同じものとして扱わないよう、単位で確認する習慣を付けましょう。
例えば I 形鋼は、材料を重心軸から離れたフランジに配置することで断面二次モーメントを大きくしています。一方、断面一次モーメントは、どの部分を対象にするかとどの軸を選ぶかで意味が変わります。
計算問題では Q と I の文字が同時に現れることがあります。Q は部分断面、I は通常は断面全体について使う点を区別すると、式の読み違いを減らせます。
断面一次モーメントの求め方と重心のまとめ
断面一次モーメントは、面積に基準軸から重心までの距離を掛けて求める量です。
基本式は Q = Aȳ であり、面積の分布と基準軸からの距離を一緒に扱います。重心を通る軸に対する断面一次モーメントはゼロになるため、重心位置の検算にも利用できます。
複合断面では、基本図形に分割して各部分の Aȳ を合計します。穴や切欠きは負の面積として、面積と断面一次モーメントの両方から差し引くことが必要です。
せん断応力の公式では、注目位置より片側の部分断面について Q を求めます。全断面の値をそのまま入れないことが、計算を正しく進める重要なポイントです。
断面二次モーメントとは単位も役割も異なります。重心、基準軸、部分面積を図に書き込み、単位と符号を確認しながら一問ずつ計算してみましょう。