電磁気の学習や電気設備の資料を読むと、磁束、ウェーバ、テスラという言葉が登場します。
似た分野の単位であるため混同しやすいものの、それぞれが表している対象は異なります。
磁石の強さを考える場面、コイルに電圧が生じる理由を理解したい場面、モーターや発電機を扱う場面では、単位の違いを正しく押さえることが大切です。
この記事では、磁束の単位であるウェーバの読み方から、テスラとの関係、計算方法、実務や学習での確認ポイントまでをわかりやすく紹介します。
磁束の単位とウェーバの基本

それではまず、磁束の単位とウェーバについて解説していきます。
磁束が表す磁力線の総量
磁束とは、ある面を通り抜ける磁界の量を表す物理量です。
磁石の周囲には磁力線が広がっているイメージがありますが、磁束はその磁力線が特定の面をどれほど通過しているかを数値として扱う考え方といえます。
記号には一般的にΦが使われます。
たとえば、コイルの内部に磁石を近づけると、コイルを通る磁束が増減します。
この変化が電磁誘導を起こし、電圧が発生するきっかけになります。
磁束は磁石そのものの強さだけではなく、通過する面積や向きにも左右される量です。
同じ磁界であっても、広い面を通る場合と狭い面を通る場合では、磁束の大きさが変わります。
ウェーバの読み方と単位記号
磁束のSI単位はウェーバです。
英語では weber と書き、単位記号は Wb です。
読み方はウェーバであり、ウェーバーと長く発音される場合もありますが、日本語の理工系分野ではウェーバと表記されることが多いでしょう。
この名称は、電磁気学に大きな功績を残したドイツの物理学者ヴィルヘルム・エドゥアルト・ウェーバに由来します。
単位記号のWbでは、Wが大文字、bが小文字になる点にも注意が必要です。
ワットのWやビットのbと混同しないよう、式全体で何を示しているのかを確認すると理解しやすくなります。
磁束の単位はウェーバで、記号はWbです。
磁束は、ある面を通過する磁界の量を示すため、面積と磁界の向きが重要になります。
一ウェーバの意味
一ウェーバは、磁束密度が一テスラの磁界が、一平方メートルの面に垂直に一様に通過するときの磁束です。
言い換えると、一Wbは一Tと一平方メートルを掛け合わせた量として表せます。
磁束 Φ = 磁束密度 B × 面積 S
面が磁界に垂直な場合は、Φ = B S となります。
一テスラの磁界は日常的にはかなり強い部類です。
一平方メートルも比較的大きな面積なので、一Wbは大きさをイメージしにくい単位かもしれません。
実際の電子機器や小型のセンサーでは、ミリウェーバやマイクロウェーバのような小さい単位で扱うこともあります。
テスラとの違いと関係
続いては、テスラとの違いと関係を確認していきます。
テスラが示す磁束密度
テスラは磁束密度の単位です。
記号はTであり、磁界がある場所でどれほど密に磁束が分布しているかを表します。
磁束が面を通る総量を表すのに対して、テスラは単位面積あたりの磁束の密度を表す点が大きな違いです。
たとえば、同じ量の水を広い土地にまく場合と狭い土地にまく場合を考えると、水の総量と地面の濡れ方の濃さは別の情報になります。
磁束と磁束密度の関係もこれに近く、ウェーバが総量、テスラが密度にあたります。
面積と角度による磁束の変化
磁界に対して面が垂直なら、面を通過する磁束は最大になります。
一方で面を傾けると、通過する磁束は小さくなります。
この関係では、面に垂直な方向と磁界のなす角度を用いて計算します。
磁束 Φ = B S cosθ
Bは磁束密度、Sは面積、θは磁界と面の法線がなす角度です。
θがゼロ度ならcosθは一となり、磁束は最大です。
θが九十度ならcosθはゼロとなり、理想的には磁束はゼロになります。
コイルを回転させて電気を発生させる発電機は、この磁束の変化を利用しています。
単位換算で確認する違い
ウェーバとテスラの関係は、次のように整理できます。
| 項目 | 磁束 | 磁束密度 |
|---|---|---|
| 物理量 | 面を通る磁界の総量 | 単位面積あたりの磁束 |
| 単位 | ウェーバ | テスラ |
| 単位記号 | Wb | T |
| 基本関係 | Φ = B S | B = Φ ÷ S |
| 面積一平方メートルの場合 | 一Wb | 一Tに対応 |
テスラは一平方メートルあたりのウェーバとしても表せます。
つまり、一Tは一Wb毎平方メートルです。
面積が増えれば、同じテスラでも磁束は増加します。
この違いを覚えると、単位の問題で迷いにくくなるでしょう。
磁束の計算方法と具体例
続いては、磁束の計算方法と具体例を確認していきます。
垂直な面を通る磁束の計算
最も基本的な計算は、磁界に対して面が垂直に置かれているケースです。
この場合は、磁束密度と面積を掛けるだけで磁束を求められます。
例として、磁束密度が二T、面積が〇・三平方メートルの場合を考えます。
Φ = 二T × 〇・三平方メートル = 〇・六Wb
面が磁界を正面から受けているため、cosの計算は必要ありません。
問題文に垂直、直角、正面という表現があるときは、この基本式を思い出すとよいでしょう。
傾いた面を通る磁束の計算
面が傾いている場合は、角度を考慮します。
重要なのは、角度が面そのものではなく、面に垂直な線である法線と磁界との角度として与えられることが多い点です。
問題によっては面と磁界の角度が示されるため、どちらの角度なのかを図で確認する必要があります。
cosを使う角度は、原則として磁界と法線の間の角度です。
磁界と面の間の角度しか示されていない場合は、九十度との差を考えて式に入れます。
単位変換や角度の取り違えは、計算結果を大きく変える原因になります。
コイルの巻数を含む磁束鎖交数
コイルでは、磁束そのものに加えて磁束鎖交数という量も重要です。
磁束鎖交数は、一巻きのコイルを通る磁束に巻数を掛けた量です。
記号にはNΦが用いられます。
巻数が多いコイルほど、同じ磁束の変化でも大きな誘導起電力を得やすくなります。
コイルの誘導起電力は、磁束そのものよりも磁束鎖交数がどれだけ速く変化するかに関係します。
発電機、変圧器、リレーなどを理解する鍵になる考え方です。
ファラデーの電磁誘導の法則では、誘導起電力は磁束鎖交数の時間変化に比例します。
磁石を速く動かしたり、コイルを速く回したりすると電圧が大きくなる理由も、磁束の変化が大きくなるためです。
電磁誘導における磁束の役割
続いては、電磁誘導における磁束の役割を確認していきます。
磁束の変化と誘導起電力
磁束が一定のままであれば、コイルに継続的な誘導起電力は発生しません。
電圧を生み出すのは、コイルを通る磁束が増えたり減ったりする変化です。
磁石をコイルに近づける、遠ざける、向きを変える、コイルを回転させるといった操作で磁束は変化します。
電磁誘導では、磁束の大きさだけでなく変化の速さが重要です。
この性質は自転車の発電機やワイヤレス充電、IH調理器など、多くの技術に応用されています。
レンツの法則と向きの考え方
誘導電流の向きは、磁束の変化を打ち消す向きになるというレンツの法則で考えられます。
たとえば、コイルを通る磁束が増加すると、コイルにはその増加を妨げる向きの磁界を作る電流が流れます。
反対に磁束が減少すると、減少を補おうとする向きの磁界が生まれます。
この考え方は最初は複雑に感じられるかもしれません。
まず、外部磁界による磁束が増えるのか減るのかを決め、その変化に逆らう磁界をコイルが作ると考えると整理しやすいでしょう。
発電機と変圧器への応用
発電機では、磁界の中でコイルを回転させ、コイルを通る磁束を周期的に変化させます。
その結果として交流の電圧が得られます。
変圧器では、一次コイルに交流を流して鉄心内の磁束を変化させ、その変化を二次コイルに伝えます。
変圧器は磁束の変化を介して電気エネルギーを伝える装置です。
鉄心を使う理由は、磁束が通りやすい経路を作り、コイル同士の磁気的な結び付きを高めるためです。
電力の送配電、充電器、家電製品の電源回路にも、こうした仕組みが活用されています。
単位の使い分けと注意点
続いては、単位の使い分けと注意点を確認していきます。
ガウスやマクスウェルとの関係
磁気に関する単位には、SI単位以外にもガウスやマクスウェルがあります。
ガウスは磁束密度に使われるCGS単位で、マクスウェルは磁束に使われる単位です。
| 単位 | 対象 | SI単位との関係 |
|---|---|---|
| テスラ | 磁束密度 | SI単位 |
| ウェーバ | 磁束 | SI単位 |
| ガウス | 磁束密度 | 一Tは一万G |
| マクスウェル | 磁束 | 一Wbは一億Mx |
古い資料、磁石の製品仕様、海外の技術資料ではガウスやマクスウェルを見かける場合があります。
数値だけを比べず、どの単位系を使っているか確認することが重要です。
ミリやマイクロを含む接頭語
小さな磁束を扱うときは、ミリウェーバやマイクロウェーバが使用されます。
ミリは千分の一、マイクロは百万分の一を表します。
一mWbは〇・〇〇一Wbであり、一μWbは〇・〇〇〇〇〇一Wbです。
接頭語を見落とすと、計算結果が千倍や百万倍ずれるおそれがあります。
測定器の表示、センサーの仕様書、実験レポートでは、単位記号の小文字と大文字まで丁寧に確認しましょう。
磁界の強さとの混同
磁束密度Bと、磁界の強さHも混同されやすい概念です。
磁束密度の単位はテスラ、磁界の強さの単位はアンペア毎メートルです。
真空中では両者に一定の関係がありますが、鉄などの磁性体を含む場合は材料の性質が関係します。
磁束はウェーバ、磁束密度はテスラ、磁界の強さはアンペア毎メートルです。
名称が似ていても、示す物理量と単位は別のものとして整理しましょう。
学習では、何が総量で何が密度なのかを先に分けると、公式の意味まで理解しやすくなります。
磁束の単位に関するまとめ
最後に、磁束の単位に関する要点をまとめます。
磁束の単位はウェーバで、読み方はウェーバ、単位記号はWbです。
磁束はある面を通過する磁界の総量を表し、磁束密度を表すテスラとは役割が異なります。
ウェーバは総量、テスラは単位面積あたりの密度と覚えると、両者の違いを整理しやすいでしょう。
面が磁界に垂直なとき、磁束は磁束密度と面積を掛けて求められます。
面が傾く場合は角度を考慮し、磁界と法線の関係を確認することが大切です。
さらに、コイルでは磁束の変化が誘導起電力を生み、発電機や変圧器などの仕組みにつながります。
単位、面積、角度、磁束の変化という四つの視点を押さえれば、電磁気の問題や技術資料を読む際にも役立つはずです。