過電圧継電器とは?検出の仕組みと用途・記号を解説!(番号)
電力設備では、雷や開閉操作、系統事故などをきっかけとして、想定を超える電圧が発生することがあります。
このような異常電圧を早期に見つけ、遮断器の動作や警報に結び付ける保護装置が過電圧継電器です。
変圧器、発電機、送電線、受電設備などを扱う際には、動作原理だけでなく、整定値、時限、保護協調、回路図の記号まで理解しておくことが重要になります。
この記事では、過電圧継電器の意味、検出の仕組み、用途、番号、図面上の記号、点検時の注意点をわかりやすく整理します。
過電圧継電器の意味と保護動作

それではまず過電圧継電器の基本的な役割について解説していきます。
異常な電圧上昇を監視する保護装置
過電圧継電器は、電気回路や電力系統の電圧が設定値を超えたときに動作する保護継電器です。
一般に英語ではOver Voltage Relayと呼ばれ、図面や保護リレーの設定資料ではOVRやANSI番号の59で示されます。
定格電圧の範囲内で安定して運転されている設備に対し、異常な高電圧が継続すると、絶縁材への負担が増えます。
絶縁劣化が進行すれば、巻線間の短絡、機器内部のフラッシオーバ、ケーブルの破損などにつながるおそれがあります。
そこで過電圧継電器は、計器用変圧器から取り込んだ電圧を常時監視し、あらかじめ決めた整定値を上回った場合に接点信号を出します。
出力された信号は、警報表示だけに用いることもあれば、遮断器をトリップさせて設備を系統から切り離すために使うこともあります。
過電圧継電器は、電圧が高くなった原因そのものを取り除く装置ではありません。
異常電圧を検出し、警報や遮断によって設備の損傷拡大を防ぐ保護装置という位置付けです。
瞬時要素と時限要素の役割
過電圧継電器には、設定値を超えた直後に動作する瞬時要素と、一定時間の継続後に動作する時限要素があります。
瞬時要素は、特に大きな電圧上昇に素早く対応したい場面で有効です。
一方で、短時間だけ発生する軽微な電圧変動まで遮断対象にすると、不要な停止を招く可能性があります。
そのため、設定値を少し超えた状態が続いたときだけ動作させる時限要素も重要になります。
時限は、定限時特性と反限時特性に分けて考えることがあります。
定限時特性は、過電圧の大きさにかかわらず設定した一定時間の経過後に動作する方式です。
反限時特性は、電圧が高いほど短時間で動作し、設定値に近い過電圧では動作時間を長くする考え方です。
保護対象の耐電圧特性と系統の運用条件を踏まえて、瞬時要素と時限要素を組み合わせます。
たとえば定格電圧が6600Vの受電設備で、過電圧要素の整定を110パーセントとする場合、基準となる電圧は7260Vです。
ただし実際の整定では、計器用変圧器の変成比、計器誤差、通常時の電圧変動、上位保護との協調も確認します。
不足電圧継電器との違い
過電圧継電器と混同されやすい装置に、不足電圧継電器があります。
不足電圧継電器は、電圧が設定値より低下したことを検出する保護継電器で、ANSI番号では27が用いられます。
過電圧継電器が高すぎる電圧を監視するのに対し、不足電圧継電器は停電、電圧降下、母線電圧の喪失などを捉える役割です。
同じ電圧を扱うリレーでも、保護したい異常状態は正反対です。
| 種類 | 主な監視対象 | 代表的な番号 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 過電圧継電器 | 設定値を超える電圧上昇 | 59 | 発電機、変圧器、母線の過電圧保護 |
| 不足電圧継電器 | 設定値を下回る電圧低下 | 27 | 停電検出、負荷遮断、再閉路条件 |
| 周波数継電器 | 周波数の上昇または低下 | 81 | 発電機保護、負荷遮断、系統安定化 |
現場では27と59を一体で備えた電圧継電器も多く、表示画面では過電圧要素と不足電圧要素を分けて確認します。
電圧検出の仕組みと動作判定
続いては過電圧をどのように測定し、動作を判定するのか確認していきます。
計器用変圧器を介した入力回路
高圧や特別高圧の電路を継電器へ直接接続すると、機器の絶縁や安全確保が難しくなります。
そこで通常は、計器用変圧器を使用して一次側の電圧を安全に低い値へ変換します。
計器用変圧器はVTまたはPTとも呼ばれ、例えば6600Vを110Vへ変成する用途で使われます。
過電圧継電器は、この二次側電圧を入力として受け取り、一次側換算の電圧が整定値を超えたかどうかを判断します。
三相回路では、相電圧、線間電圧、零相電圧のどれを監視するかによって接続方法が異なります。
地絡に伴う異常電圧を検出したい場合には、零相電圧を利用する構成が選ばれることもあります。
どの電圧を入力にしているかを確認しないと、整定値の意味を正しく評価できません。
整定値と復帰値の関係
過電圧継電器では、動作開始となる電圧を整定値と呼びます。
たとえば整定値が120Vであれば、入力電圧が120Vを超えた時点から動作条件の判定が始まります。
しかし、電圧が120V付近で小刻みに上下すると、接点が繰り返し動作するおそれがあります。
この不安定な動作を防ぐため、多くの継電器には復帰値または復帰比が設定されています。
復帰値は、一度動作した継電器が通常状態へ戻るための電圧です。
一般には、動作値よりも少し低い電圧まで下がった場合に復帰するよう設計されています。
動作値が110V、復帰比が95パーセントの場合、概算の復帰値は104.5Vです。
この差があることで、110V付近のわずかな変動による接点のばたつきを抑えやすくなります。
デジタル保護継電器では、動作値、復帰値、時限、出力先を画面や設定ソフトで個別に指定できる機種もあります。
設定変更後は、設定表との照合だけでなく、試験器を使った動作試験で実際の挙動を確認することが大切です。
演算処理と出力接点
従来の電磁形継電器では、コイルや可動部を利用して入力電圧に応じた動作を行っていました。
現在は、マイクロプロセッサを搭載したデジタル形保護継電器が広く使われています。
デジタル形では、入力された交流波形をサンプリングし、実効値や基本波成分を演算して過電圧を判定します。
波形のひずみ、瞬間的なノイズ、短いサージなどの影響を考慮し、一定の判定時間を設ける場合もあります。
動作条件が成立すると、継電器内部の出力接点または通信信号が変化します。
この信号は、遮断器のトリップ回路、警報盤、監視制御装置、記録装置などへ送られます。
検出部と遮断回路は別系統で構成されることが多いため、継電器が動作しても遮断器が確実に開放するとは限りません。
保護回路全体として、トリップコイル、補助リレー、直流制御電源、遮断器機構まで確認する必要があります。
過電圧が発生する主な原因
続いては設備に過電圧が現れる代表的な原因を確認していきます。
雷サージと誘導雷
落雷による雷サージは、過電圧を考えるうえで代表的な要因です。
送電線や配電線に雷が直撃すると、非常に急峻で大きな電圧上昇が発生します。
直接落雷でなくても、近くへの落雷によって電磁誘導を受け、設備に異常電圧が加わることがあります。
雷サージは立ち上がりが速く、通常の過電圧継電器だけで完全に防ぐことは困難です。
そのため、避雷器を設置してサージ電圧を大地へ逃がし、機器端子に加わる電圧を抑える対策が重要になります。
過電圧継電器は、雷を直接処理する装置というより、雷後に残る異常状態や系統電圧の上昇を監視する役割を担います。
雷対策では、避雷器、接地、絶縁協調、保護継電器を別々に考えず、設備全体の保護として組み合わせることが重要です。
過電圧継電器だけを追加しても、急峻な雷サージへの対策が十分になるとは限りません。
負荷遮断と開閉サージ
大きな負荷を遮断したとき、回路に蓄えられていたエネルギーの影響で一時的な過電圧が発生する場合があります。
特にリアクトル、変圧器、モーターなど、インダクタンスを持つ設備の開閉では注意が必要です。
遮断器の開極時にはアークが発生し、その消弧過程で電圧波形が変化します。
コンデンサバンクの投入や遮断でも、系統の容量やインピーダンスとの組み合わせにより過渡的な電圧変動が起こります。
こうした現象を開閉サージと呼び、設備規模や系統構成によって影響の大きさが変わります。
短時間の過渡現象なのか、継続的な電圧上昇なのかを見極めることが、過電圧継電器の整定において欠かせません。
地絡と中性点方式による影響
配電系統で一線地絡が発生した場合、健全相の対地電圧が上昇することがあります。
この上昇の程度は、中性点接地方式によって大きく異なります。
非接地方式や高抵抗接地方式では、地絡時に健全相の対地電圧が高くなり、絶縁への影響を検討する必要があります。
また、フェロレゾナンスと呼ばれる現象によって、計器用変圧器や系統の静電容量が関係する異常電圧が発生することもあります。
地絡保護には零相電圧継電器や地絡過電圧継電器が用いられることがあり、一般的な相間過電圧保護とは目的が異なります。
地絡時の電圧上昇は、相間電圧だけを見ていては把握できない場合があります。
| 発生要因 | 電圧上昇の特徴 | 確認したい設備 | 主な対策 |
|---|---|---|---|
| 雷 | 急峻で短時間 | 避雷器、接地、ケーブル端末 | 避雷器と絶縁協調 |
| 開閉操作 | 投入や遮断に伴う過渡現象 | 遮断器、コンデンサ、リアクトル | 開閉条件と保護時限の見直し |
| 負荷遮断 | 負荷減少後の電圧上昇 | 発電機、調圧装置、系統連系部 | 励磁制御と過電圧保護 |
| 地絡 | 健全相の対地電圧上昇 | 中性点、零相回路、対地絶縁 | 接地方式と地絡保護の確認 |
用途別の設置場所と保護協調
続いては過電圧継電器が使用される設備と、保護協調の考え方を確認していきます。
受電設備と高圧配電盤
工場、商業施設、病院、学校などの高圧受電設備では、受電盤や高圧配電盤に保護継電器が設置されます。
受電点で過電圧を監視することで、構内設備へ異常電圧が継続して加わる事態を早期に把握できます。
ただし、電力会社側の系統事故、需要家側の負荷変化、進相コンデンサの運転状態など、電圧変動の原因は一つではありません。
過電圧継電器が動作したときは、単にリレーを復帰させるだけでなく、記録計や保護継電器のイベント履歴を確認します。
いつ、どの相で、どれほどの電圧が、何秒間続いたのかを確認すれば、原因調査の手掛かりになります。
警報動作と遮断動作を分けて整定する方法は、重要負荷を抱える受電設備でもよく採用されます。
発電機と励磁装置
発電機では、界磁電流を制御する励磁装置の状態が端子電圧に大きく影響します。
負荷が急に減少した場合や励磁制御に異常が生じた場合には、発電機端子電圧が上昇する可能性があります。
発電機の過電圧は、固定子巻線、変圧器、接続された負荷機器へ影響を及ぼすため、迅速な監視が必要です。
発電機保護では、過電圧継電器だけでなく、過励磁保護、周波数保護、逆電力保護、差動保護などと組み合わせます。
特に周波数が上昇した状態で電圧も高くなると、機器の磁束が増えて過励磁につながる場合があります。
電圧だけを単独で判断せず、周波数や無効電力、励磁電流などとの関係を見る視点が求められます。
発電機では、電圧と周波数の比であるVHzが重要な管理項目になります。
電圧が上昇し、周波数が低下するとVHzが増加し、鉄心の飽和や過熱につながる可能性があります。
変圧器と母線の保護協調
変圧器や母線に設置する過電圧継電器では、下位回路と上位回路の保護協調が大切です。
下位側の異常であるにもかかわらず、上位側の受電遮断器が先に動作すると、不要に広い範囲が停電する可能性があります。
反対に、下位側の保護が遅すぎると、異常状態が長く続き、上位設備へ負担をかけるおそれがあります。
整定値と動作時限を決める際には、保護対象の許容電圧、遮断器の遮断時間、各リレーの動作時間を一覧で整理します。
電圧保護だけでなく、過電流保護、地絡保護、差動保護との連携も必要になるでしょう。
保護協調の目的は、事故区間だけをできるだけ早く切り離すことにあります。
記号と番号の読み方
続いては単線結線図や保護リレー図で使われる記号と番号を確認していきます。
ANSI番号59の意味
過電圧継電器を表す代表的な番号は59です。
この番号は、保護リレーの機能を共通して表すために使用されるデバイス番号の一つです。
図面上では、丸や四角で囲まれた59の数字が記載され、過電圧検出要素があることを示します。
メーカーや設備ごとに詳細な表記方法は異なりますが、59という番号を知っていれば、保護回路の役割を素早く把握しやすくなります。
複数の過電圧要素がある場合には、59P、59N、59Gのように末尾の文字を付け、相電圧用や中性点用などを区別することがあります。
ただし接尾記号の意味は設計書やメーカー仕様により変わるため、略号だけで断定しないことが必要です。
単線結線図における表記
単線結線図では、計器用変圧器から保護継電器へつながる計測回路と、リレー出力から遮断器トリップ回路へつながる制御回路を分けて読みます。
VTの二次側から59へ配線が伸びていれば、その継電器が電圧入力を利用していることがわかります。
59の出力側が52Tなどのトリップ回路へ接続されている場合、過電圧検出時に遮断器を開放する構成と考えられます。
52は交流遮断器を示す番号として用いられ、52Tは遮断器トリップに関係する表記として見かけます。
図面では電圧回路用ヒューズ、試験端子、短絡端子、補助接点なども確認しましょう。
特にVT二次回路のヒューズが切れると、実際の系統電圧とは異なる入力状態となり、保護機能に影響が出る可能性があります。
図面上の59は、過電圧保護機能を示す番号です。
実際にどの相の電圧を見ているか、警報だけか遮断まで行うかは、接続図と設定資料を合わせて確認します。
主な関連番号と略号
保護回路を読むときは、59だけでなく周辺にある番号も理解すると判断しやすくなります。
27は不足電圧、50は瞬時過電流、51は時限過電流、64は地絡、87は差動保護に関係する代表的な番号です。
これらは単独で働くのではなく、事故の種類や設備の重要度に応じて組み合わせられます。
| 番号 | 機能名称 | 確認する主な状態 |
|---|---|---|
| 27 | 不足電圧継電器 | 電圧低下、停電、母線電圧喪失 |
| 50 | 瞬時過電流継電器 | 大きな短絡電流 |
| 51 | 時限過電流継電器 | 継続する過電流 |
| 59 | 過電圧継電器 | 設定値を超える電圧上昇 |
| 64 | 地絡保護継電器 | 地絡電流または地絡電圧 |
| 87 | 差動継電器 | 保護区間内部の事故電流 |
番号は保護機能の共通言語ですが、設備固有の動作条件までは表しません。
竣工図、保護協調図、整定値一覧、シーケンス図を確認して、実際の運用に落とし込むことが重要です。
点検試験と整定時の注意点
続いては過電圧継電器を確実に機能させるための点検試験と整定の注意点を確認していきます。
定期点検で確認したい項目
過電圧継電器は通常時に目立った動きを見せないため、定期点検による確認が欠かせません。
まず、リレー本体に異常表示、故障表示、電源異常表示がないかを確認します。
次に、設定値が保護協調資料や設備台帳の記載と一致しているかを照合します。
デジタル継電器では、設定データの変更履歴やパスワード管理も確認対象になります。
端子ねじの緩み、配線の変色、VT二次回路のヒューズ状態、試験端子の接触状態も見落とせません。
長期間使用した設備では、端子部の腐食や補助リレー接点の摩耗が、動作不良の原因になることがあります。
動作試験と遮断試験
動作試験では、継電器試験器から所定の電圧を入力し、整定値どおりに動作するかを確認します。
設定値の少し下では動作せず、設定値を超えた入力では定められた時限で動作することを確認する流れです。
復帰値についても、電圧を下げたときに適切な値で復帰するかを試験します。
さらに遮断動作を伴う保護回路では、リレー接点だけでなく、遮断器のトリップコイルまで信号が届くかを確認します。
この試験は誤操作による停電リスクがあるため、作業範囲、遮断対象、復旧手順を事前に明確にしたうえで実施します。
継電器単体の動作試験と、保護回路全体の連動試験は別の確認項目です。
試験記録には、試験日、試験者、使用した試験器、動作電圧、復帰電圧、動作時間、接点状態を残します。
前回記録と比較すると、特性の変化や設定変更の見落としを発見しやすくなります。
不要動作を避ける整定管理
整定値を低くしすぎると、通常の電圧変動や一時的な系統状態で過電圧継電器が動作する可能性があります。
不要動作による設備停止は、生産ライン、医療機器、情報システムなどに大きな影響を及ぼすことがあります。
一方で、整定値を高くしすぎれば、本来保護すべき異常電圧を見逃すおそれがあります。
適切な整定は、設備の定格、絶縁レベル、通常時の電圧変動、上位と下位の保護時限を総合して決定します。
系統構成の変更、受電契約の変更、発電設備や蓄電池の増設を行った場合は、従来の整定が適切とは限りません。
設備変更後の保護協調確認を保守計画に含めることが、安全で安定した運用につながります。
過電圧継電器のまとめ
過電圧継電器は、設定値を超える異常な電圧上昇を検出し、警報や遮断によって電力設備を保護する装置です。
代表的な番号は59であり、計器用変圧器を通じて得た電圧をもとに、整定値と時限条件に従って動作を判定します。
雷、開閉操作、負荷遮断、地絡など、過電圧の発生要因は多岐にわたります。
そのため、避雷器や接地設備、他の保護継電器との関係も含めて検討することが欠かせません。
図面を読む際は59の記号だけで判断せず、VTの接続先、入力電圧の種類、出力先、整定値一覧を確認しましょう。
また、定期試験では動作値と時限だけでなく、遮断器まで含めた保護回路全体の連動を確認することが重要です。
正しい整定、確実な試験、継続的な記録管理によって、過電圧継電器は設備の信頼性を支える役割を果たします。